重量物運搬の注意点とは|大型の重量物運搬には機械の免許も必要

公開日:2022/08/23

重量物を運ぶとき、最も注意すべきは人体への負担です。特に、労働災害としての腰痛の件数が増加傾向にあることを考えても、重量物運搬で人体への負担が必要以上にかからないようにすべきです。そこで、法令や通達で人体に負担がかからないよう、さまざまな規定がなされています。また、人の手では運べない大型の重量物を運搬する際には免許が必要です。今回は、重量物を人の手で運ぶ際の注意点と、大型の重量物を運ぶための機械の免許についてご紹介します。

重量物とは

重量物とは、一般的に人が持って重いと感じるもののことを指します。書類の詰まった段ボールやベッドなどの家具から、自動車や電車まで「持てるけれど重い」ものもあれば、機械を使わなければとうてい運べないようなものも含まれます。

人力で持ち運べるレベルの重量物であっても、重量物を取り扱うことは腰痛の原因となりうることから、法令と通達で業務の形態と年齢・性別によって制限がなされています。例えば、満18歳以上の男性が継続的に行う作業で重量物を取り扱う場合、体重の約40%以下の重量物しか持ってはいけないことになっています。

重量物の定義について詳しくは、以下の記事でご紹介しています。ぜひこちらもご一読ください。
重量物の定義とは?法令ではどのように定められている?

腰痛は依然として増加傾向にある労働災害であり、できる限り腰痛を防げるように法令や通達が定められています。これには、重量物を運ぶ際の持ち方や服装、適切な作業時間なども含まれており、次章でご紹介します。

重量物運搬の注意点

重量物を運搬する際には、できる限り腰痛などの労働災害を避けるための注意点があります。今回は、主に4つのポイントに絞って解説します。

できるだけ自動化、省力化する

重量物を運ぶときは、できる限り自動化、省力化し、人力の負担を軽減することが求められます。具体的には、以下のようなことを指します。

  • 適切な動力装置など
  • 台車や補助機器の使用など

例)倉庫での荷運びにはリフターなどの昇降装置、自動運搬装置などを備えた貨物自動車を使ったり、ローラーコンベヤーや台車、二輪台車・フォークリフトなどの補助器具や道具などを使ったりする。

荷物自体の改善

そもそも、荷物自体を運びやすいよう以下のように改善することも重要です。

  • かさばらないように適切な材料で梱包し、取り扱いやすくする
  • 持ち上げ、運搬には手カギや吸盤など補助具を使い、持ちやすくする
  • 荷物が大きい、重量がかさむといった場合は小分けにして小さく、軽量化する

また、取り扱う物の重量は可能な限り明示することや、著しく重心が偏っている荷物はその旨も明示することが求められます。これは、年齢や性別などで運べる重量に制限があることはもちろん、正しく重心を把握することで持ち運びやすくするためです。

作業姿勢や動作、服装

重量物を運ぶときに限らず、腰に負担をかけないためには動作をゆっくり行う、前屈やひねりなど不自然な姿勢をとらない、身体の重心の移動を少なくするなど、基本的な腰痛予防の事柄に注意しましょう。その上で、以下の事柄にも注意する必要があります。

  • 重量物を持ち上げたり押したりする際は、できるだけ重心を低くし、身体を対象物に近づける
  • 「はいつけ」「はいくずし」作業では、できるだけ「はい」を肩より上で取り扱わない
  • 床から荷物を持ち上げるときは、片足を少し前に出して膝を曲げ、腰をしっかり降ろして荷物を抱え、膝を伸ばして立ち上がる
  • 適切な高さの作業台を用意し、腰をかがめながら作業しないようにする
  • 荷物を持ち上げる際は呼吸を整え、腹圧を加えながら行う
  • 荷物を持っている間、背を伸ばして腰のひねりが少なくなるようにする
  • 2人以上で作業するときは、できるだけ身長差が少なくなるようにする

※はい…袋や箱、木材などを積み重ねた荷物の集団のこと。

また、頭部保護の為のヘルメット着用・作業時には足に適した靴(安全靴等)を選び、ハイヒールやサンダルを使わないことはもちろん、作業服には動作や姿勢を妨げないよう伸縮性・保湿性・吸湿性のあるものを使う、などの決まりがあります。腰部保護ベルトについては、労働者にとって効果があるかどうかよく見極めて使いましょう。

作業時間

過労を引き起こすような長時間勤務を避けることはもとより、適宜休憩時間を設けて姿勢を変えたり、休息する場合は横になって安静を保ったりできるようにすることが求められます。また、単位時間内における重量物の取扱い量が、労働者にとって過剰な負担とならないよう、適切に定めることも必要です。

そのためには、取り扱う物の重量や頻度、運搬距離や速度など作業負荷を考慮することが重要です。小休止・休息を挟んだり、他の軽作業と組み合わせて連続した重量物取扱い時間を減らすなど、腰への負担を軽減し、腰痛につながらないような配慮も必要でしょう。

大型の重量物を運搬する際に必要な免許

大型の重量物を運搬する際には、関連する車や機械を運転・操縦するための免許が必要です。最後に、免許の概要と取得条件をご紹介します。

大型免許

大型トラックを運転するために必要な免許のことです。大型トラックとは、車両の総重量が11t以上、最大積載量が6.5t以上のトラックのことを指し、以下の取得条件があります。

  • 満21歳以上である
  • 普通免許または大型特殊免許を取得済みである
  • 免許の経歴が通算3年以上である

他にも、視力や聴力などの身体能力について以下の条件が定められています。

  • 片眼0.5以上、両眼合わせて0.8以上の視力がある
  • 深視力の誤差が平均2cm以下である
  • 色彩を識別できる
  • 10mの距離から、90dBの警報が聞こえる
  • 自転車の運転に支障を及ぼすような身体障害を持たない

これらはいずれも、現場で適切に、かつ即座に判断が行えるために必要な能力です。

けん引免許

車両総重量が750kgを超える車をけん引する際に必要な免許のことです。主に大型トレーラーを運転する場合に取得する免許で、以下の取得条件があります。

  • 満18歳以上である
  • 普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許、大型特殊免許のいずれかを取得済みである
  • その他、大型免許取得と同程度の視力や聴力など身体能力を持っている

フォークリフト運転技能講習

フォークリフトを運転するためには、労働安全衛生法に基づく技能講習を受ける必要があります。原則として満18歳以上で普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許、大型特殊免許のいずれかを取得済みであれば技能講習を受けられますが、他にも既に業務に従事している、特定の資格を持っているなどで講習の一部を免除してもらえることもあります。

クレーン関連の免許

クレーン関連の免許には、主に小型移動式クレーン技能講習、移動式クレーン運転免許、玉掛け技能講習の3つがあります。

■小型移動式クレーン技能講習
吊り上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーンを操縦する際に必要な講習です。持っている免許や資格によって受けるべき講習が変わりますので、条件は各講習をよく確認しましょう。

■移動式クレーン運転免許
吊り上げ荷重5t以上の移動式クレーンを操縦する際に必要な免許です。各種運転免許同様、実技教習を終了後、学科試験に合格する必要があります。

■玉掛け技能講習
荷物をクレーンのフックにかけるための資格です。クレーンを操作する際は、基本的に荷物を持ち上げる+運ぶ両方の動作を行うので、上記の技能講習や運転免許とともに玉掛け技能講習も受けておく必要があるでしょう。

まとめ

重量物を運ぶ際には人体に必要以上の負荷がかからないよう、作業動作や服装、作業時間などが詳しく指針として定められています。できるだけ自動化・省力化するのはもちろん、正しい姿勢で作業服や靴に気をつけ、適度に休息をとらなくてはなりません。また、大型の重量物を運搬する際には、各種免許が必要です。

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