天井クレーンにはどんな種類がある? 倉庫や工場で活躍するクレーンの定義や種類を解説

公開日:2025/07/31

荷物を吊り上げ水平に運搬するためのクレーンには、様々な種類があります。倉庫や工場で活躍する天井クレーンにも多種多様な種類があり、それぞれの現場に適したものを設置しなければいけません。この記事では、倉庫や工場などで活躍する天井クレーンについて、定義や種類などを解説します。

クレーンとは

荷物を吊り上げ、そのまま水平に運搬する機械が「クレーン」です。動力を用いて荷物を吊り上げると同時に、吊り上げた荷物を水平に運搬します。したがって、人の力で荷物を持ち上げたり、移動させたりするのはクレーンではないといえます。なお、クレーンの分類上、移動式クレーンとデリックといわれる機械「以外」のものという定義があります。

天井クレーンとは

そのなかでも、天井クレーンとは、建屋の両側の壁に沿って設けられたランウェイ上を走行するクレーンです。ちょうど、建屋の天井をクレーンが走るようになるのでこの名称が用いられています。屋外に設置するランウェイの上を走行するタイプのクレーンについても、同様の構造や形状であれば天井クレーンとしており、いずれも普通型と特殊型に分類されます。

普通型

天井クレーンの普通型には「クラブトロリ天井式クレーン」、「ホイスト式天井クレーン」の2種類があります。
クラブトロリ式天井クレーンは荷物を吊り上げながら走行する移動式のクレーンであり、運転室の操作性が非常に高いのが特徴です。その他、トロリ式にはクレーンガーダの上を横行するクラブトロリと、ロープを使用するロープトロリがあります。
ホイスト式天井クレーンには電気ホイストがあり、基本的にはクラブトロリと同じであるが小型のためさまざまな場所に設置でき、小容量の荷物を運搬できるのが利点です。

特殊型

特殊型クレーンは、「旋回式」、「すべり出し式」、「旋回マントロリ式」、「製鉄用」の4種類に分類されます。
旋回式は軸を中心に回転して荷物を運搬するもの、すべり出し式はガーダが伸縮するものです。また、旋回マントロリ式は、旋回できる機能を持ったマントロリタイプの天井クレーンです。

また、製鉄用は「装入クレーン」、「レードルクレーン」、「鋼塊クレーン」、「焼入れクレーン」、「原料クレーン」、「鍛造クレーン」など、多くの種類があります。いずれも、鋳造品を熱間鋳造するためのプレス機とあわせて鋳造作業の現場で使用されるものです。

装入クレーンは、炭素鋼や鋳鋼の製造や金属の製造、精製において、原料を炉へ詰め込むため、レードルクレーンは、溶鉄鍋を吊り上げて、その中の銑鉄を溶かしたもの(溶銑)を流し込む、または転炉で処理した溶鍋を運搬するなどのために使用されます。また、鋼塊を運ぶための鋼塊クレーンは、造塊用の吊り具があること、焼入れのために使用する焼入れクレーンは、巻き上げが早いのが特徴です。その他、原料クレーンは装入受台などに原料を運ぶために使用されます。

天井クレーンの種類について

天井クレーンの種類には「軌条式天井クレーン」と「懸垂式天井クレーン」の2種類があり、用途に合わせて機能を選択します。設置する際は吊荷の定格荷重(t)とクレーンスパン(m)、走行レール幅(mm)を確認してください。

軌条式天井クレーン

「軌条式天井クレーン」とは、走行ランウェイ上を走行するタイプのクレーンの総称です。日本国内のクレーンでは、最もスタンダードなものだといえるでしょう。
その特徴は安定性の高さにあります。軌条式天井クレーンは、大容量クレーンの設置が可能。さらに、天井梁下の空間を利用できることから、大幅な有効揚程の確保も容易であるというのもであるというのも特徴です。

軌条式天井クレーンには1本のガーダを有するシングルガーダタイプと、2本のガーダを有するダブルガーダタイプがあります。シングルガーダは懸垂式ホイスト、ダブルガーダにはクラブ、またはダブルレール形ホイストの巻上機が使用されています。

・軌条式電動サドル……電動で走行移動する。なお鉄車輪である
・軌条式電動サドル……電動で走行移動する。ウレタン車輪で騒音・振動がなめらかである
・軌条式プレンサドル……人力で走行移動する。軽作業に適している
・軌条式ギヤードサドル……ハンドチェーン操作で横行移動する

懸垂式天井クレーン

懸垂式天井クレーンとは、走行ランウェイにぶら下がった状態で走行するクレーンの総称です。横行方向のフックヨリに有効で、走行ランウェイの外でも荷の運搬が可能になります。また、走行レールを取り付ける位置やスパンを任意で設定できるのも特徴です。生産ラインの工程を意識した設計も可能でしょう。

基本的にはシングルガーダであるため、巻上機には「懸垂形ホイスト」が用いられる。
・懸垂式電動サドル……電動で移動する
・懸垂式プレンサドル……人力で走行移動する。軽作業に適している
・懸垂式ギヤードサドル……ハンドチェーン操作で横行移動する

天井クレーンを導入することで得られるメリット

では、天井クレーンを導入することによって、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。本項で解説していきます。

作業効率が大幅に向上する

天井クレーンを導入する最大のメリットのひとつは、作業効率の向上です。重量物や長尺物を人力やフォークリフトで搬送していた場合と比較すると、クレーンによる空中搬送はよりスムーズかつ迅速な移動を可能にします。 とくに工場や倉庫での反復作業においては、工程全体の時間短縮にもつながり、トータルの生産性向上に貢献します。搬送時の停止・調整も正確に行えるため、製品や設備の破損リスクも軽減できる点が利点です。

床面スペースを有効活用できる

天井クレーンは建屋の上部空間を利用して荷物を運ぶため、床面に機器を設置する必要がありません。このため、通路や作業スペースを広く確保しやすく、作業動線の自由度が高まります。 たとえば、フォークリフトなどの車両と併用しても干渉が起きにくく、レイアウト変更にも柔軟に対応できます。倉庫や工場内のレイアウト最適化を進めたい企業にとって、クレーン導入は空間の有効活用手段となるでしょう。

安全性の向上と事故リスクの低減

重量物を人力で運搬する作業は、落下や挟まれといった事故リスクを伴います。天井クレーンを導入することで、人が直接荷物を持ち運ぶ必要がなくなり、作業者の負担を大幅に軽減できます。 また、操作は遠隔または定位置で行うため、周囲の安全を確保しやすく、ヒューマンエラーの発生も抑制可能です。結果として、労災リスクの低下や作業現場の安全性向上に寄与します。

天井クレーンを導入する際の注意点

続いて、天井クレーンを導入する際、どういった点に注意すべきなのでしょうか。本項でポイント別に解説していきます。

設置場所の構造や耐荷重を確認する

天井クレーンは重量物を持ち上げる装置であるため、建屋の構造がその荷重に耐えられるかどうかを事前の調査が必要です。 とくに古い建物や軽量鉄骨の施設では、天井梁の補強が必要になるケースもあります。設置後に不具合が発生すると大きな事故につながるおそれがあるため、建築構造の点検や構造計算を事前に行い、設置に適した場所かを慎重に判断することが求められます。

操作資格や安全教育が求められる

天井クレーンの操作には、法令に基づく資格や講習の受講が必要です。たとえば、吊り上げ荷重5トン未満の場合は「クレーン特別教育」、5トン以上の場合は「クレーン運転士免許」が必要となります。

また、作業現場では周囲の安全確認や合図など、連携した作業も求められるため、作業者全体に対して安全教育を行う必要があります。導入にあたっては、資格取得の計画や教育体制の整備が重要となるでしょう。

点検・メンテナンスコストが発生する

天井クレーンは、導入後も継続的な点検とメンテナンスが必要な機械設備です。労働安全衛生法により、1年ごとの定期自主検査や、部品の摩耗・故障に対する整備が義務付けられています。 そのため、購入・設置費用だけでなく、ランニングコストも予算に組み込んでおく必要があります。定期点検を怠ると故障や事故につながるリスクが高まるため、維持管理体制の確立が欠かせません。

種類別に見る天井クレーンの活用シーンとは?

では、天井クレーンの種類によってどのような活用シーンが想定されるのでしょうか。本項で解説していきます。

軌条式天井クレーンの活用シーン

軌条式天井クレーンは、走行レール上をクレーンが移動するタイプで、日本国内では最も一般的な形式です。特に、大型部品の搬送や重量物の運搬が求められる製造現場で活躍しており、自動車工場や金属加工工場、機械製造業などで多く導入されています。 ダブルガーダタイプを選べば、重荷の吊り上げや広範囲の搬送にも対応可能で、有効揚程が広く確保できる点も魅力です。また、建屋の天井空間を効率よく活用できるため、床スペースを有効に使いたい現場にも最適です。高い安定性と搬送能力が求められる作業において、信頼性の高い選択肢といえるでしょう。

懸垂式天井クレーンの活用シーン

懸垂式天井クレーンは、天井から吊り下げられた状態でレール上を移動するタイプで、軽量物の搬送や中小規模施設での活用に適しています。特に、スペースが限られた工場や、梁の下空間を有効に使いたい倉庫などで導入されることが多く、生産ラインに沿って柔軟な配置が可能です。 また、横行方向にフックが外に張り出せるため、レール外側への搬送にも対応できるのが特徴です。構造的に軽量で施工負担が少なく、コストや設置自由度を重視する事業者にとって、使い勝手の良い選択肢となるでしょう。

まとめ

動力を用いて荷物を吊り上げる機械で、吊り上げた荷物を水平に運搬する機械装置であるクレーンはその構造、形状、用途によって分類されます。
その中でも、倉庫や工場で活躍している天井クレーンは、建屋の両側の壁に沿うようにして設置されるランウェイ上を走行するもの。つまり、建屋の天井をクレーンが走行する天井クレーンで業務を効率化しています。

その天井クレーンには「軌条式天井クレーン」と「懸垂式天井クレーン」の2種類があり、それぞれ電動で走行する電動サドルなどがあるので、倉庫や工場では、取り扱っている荷物や建屋の構造や実際の用途に合わせて選択することが重要です。

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