5トン以上の天井クレーンを使用するメリットとは?導入費用や資格の合格率、注意点も解説
工場や倉庫などの現場で、大型の資材や製品を効率的に移動させるために欠かせないのが「天井クレーン」です。特に5トン以上の荷重に対応する天井クレーンは、大型・重量物の取り扱いが多い現場で重宝されています。
本記事では、5トン以上の天井クレーンの概要や使用するメリットや、導入前に知っておきたい費用の目安、運転に必要な資格の種類・合格率を解説します。
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5トン以上の天井クレーンとは

5トン以上の天井クレーンとは、5トンを超える重量物を持ち上げて移動させる能力を持つ産業用クレーンのことを指します。主に工場や物流倉庫、造船所、鋼材加工場など、重量物を日常的に取り扱う現場で使用されます。
天井に設置されたレール上を横行・走行しながら荷を移動させる構造で、床面を占有しないため、保管スペースを広く活用できる点が特徴です。 また、操作方法には床上操作、無線操作、運転室操作など複数の方式があり、現場の規模や作業内容に応じた選定が可能です。高荷重に対応する分、強度や安全性も重視されており、導入には法的な資格要件や設備基準も関わってきます。
5トン以上の天井クレーンを使用するメリット

続いて本項では、5トン以上の天井クレーンを使用することで期待できるメリットを解説していきます。
重量物の安全かつ効率的な搬送
5トン以上の天井クレーンは、重量物を安全に持ち上げて移動させるために設計されています。手作業やフォークリフトでは困難な荷物も、スムーズに搬送できるのが大きな特長です。
特に、精密な位置決めが求められる製造現場では、その操作性と安定性が作業効率を高める要因となります。また、高所への積み上げや複数箇所への移動も自在に行えるため、作業時間の短縮や事故のリスク低減にも寄与します。結果として、現場の生産性向上と安全確保を同時に実現できる設備といえるでしょう。
作業の省力化・人手不足対策
労働人口の減少が進む中、省力化への対応は避けて通れません。5トン以上の天井クレーンは、作業員の代わりに重量物を運搬できるため、人手不足の解消に貢献します。人力での持ち運びや複数人での搬送が不要となり、最小限の人員で作業が可能になります。
また、過重労働によるケガや腰痛などの労働災害も抑制できるため、職場の安全衛生環境の改善にもつながります。経験や技量に依存しない安定した作業が実現できる点も、クレーン導入の大きなメリットです。
工場・倉庫スペースの有効活用
天井クレーンは建物の上部空間を活用する構造のため、床面を占有せずに荷物を移動できます。これにより、フォークリフトの通路や一時的な荷置きスペースを最小限に抑えることが可能です。特に保管量の多い物流倉庫や大型設備が並ぶ工場では、限られた空間を最大限に使える点が評価されています。
加えて、レイアウト変更にも柔軟に対応できるため、長期的な視点で見た場合の空間効率や作業動線の最適化にも寄与します。結果として、作業環境全体の生産性が向上します。
5トン以上の天井クレーンの種類・導入費用

では、5トン以上の天井クレーンにはどのような種類があるのでしょうか。本項で導入にかかる費用の目安も合わせて解説していきます。
オーバーヘッドクレーン
オーバーヘッドクレーンは、工場や倉庫の天井部分に設置されたレール上を走行する形式で、5トン以上の重量物を効率よく搬送するのに適しています。シングルガーダーとダブルガーダーの2タイプがあり、荷重や設置空間に応じて選定が可能です。
特にダブルガーダー型は高揚程・高荷重に対応できるため、大型機械や重量部材の取り扱いが多い現場で多く導入されています。また、建物の構造に合わせて設計・施工できる柔軟性も高く、既存施設への後付けも対応可能です。設備全体の効率化に寄与する代表的なクレーン形式といえるでしょう。
導入費用
オーバーヘッドクレーンの導入費用は、小規模なもので70万〜200万円程度から、一般的な5トン級では200万〜500万円程度になり、つり上げ荷重やスパン(柱間距離)などの仕様により大きく変動します。
本体価格に加え、レール設置や電源工事、設計費などの諸経費がかかるため、中〜大型設備では1,000万円を超えるケースも珍しくありません。 また、既存建屋へ後付けする場合は、別途建屋の補強費用が発生する可能性がある点にも注意が必要です。
ホイスト式・クラブトロリ式クレーン
ホイスト式クレーンは、比較的シンプルな構造でコストパフォーマンスに優れていることから、多くの中小規模工場で導入されています。一方でクラブトロリ式クレーンは、走行部と巻上機が別構造になっており、荷重の分散や高速移動が強みです。
5トン以上の高荷重対応が求められる現場では、クラブトロリ式の方が安定性や耐久性に優れているため、重視される傾向にあります。いずれの方式も、搬送距離や使用頻度、荷の特性に応じて適切に選定することが重要です。
導入費用
導入費用は、ホイスト式の方が圧倒的に安価です。クラブトロリ式は構造が複雑で重量もあるため、ホイスト式の1.5倍〜2倍以上の費用がかかるのが一般的です。
具体的な目安として、5トンクラスの巻上機(本体)単体の価格で見ると、ホイスト式は80万円〜200万円程度から流通しています。 初期導入コストを優先するならホイスト式ですが、過酷な使用環境で数十年単位の使用を見込む場合は、メンテナンス頻度や耐久性を考慮してクラブトロリ式が選ばれるケースもあります。
5トン以上の天井クレーン運転に必要な資格・講習とは?合格率・費用も解説

続いては、5トン以上の天井クレーンの運転に必要な資格に加え、合格率や取得にかかる費用の目安について解説していきます。
クレーン・デリック運転士免許
5トン以上の天井クレーンを操作するには、基本的に「クレーン・デリック運転士免許(限定なしまたは限定付き)」が必要になります。この免許は国家資格であり、厚生労働省の指定を受けた試験に合格することで取得可能です。
床上操作式や無線操作式のいずれにも対応できるため、幅広い現場での運用に役立ちます。特に5トンを超えるクレーンでは安全性が重視されるため、運転者が正しい知識と技能を持つことが法律上も義務付けられています。定期的な知識の更新や安全講習の受講も推奨されます。
合格率
令和6年度の試験実施統計によると、クレーン・デリック運転士免許(限定なし・クレーン限定含む)の合格率は、学科試験が59.4%、実技試験が48.8%となっています。
学科試験は約6割が合格していますが、実技試験は合格率が5割を下回っており、操作技術の習得がハードルとなっていることが分かります。そのため、未経験者の場合は教習所に通い、実技の基礎を確実に身につけてから受験することが推奨されます。
費用
資格取得にかかる費用は、以下のように教習所(登録教習機関)を利用するか、試験場での直接受験(一発試験)かによって大きく異なります。
| 取得方法 | 費用の目安 | 内訳・特徴 |
| 指定教習所に通う場合(一般的) | 12万円〜15万円程度 | ・学科・実技の講習費とテキスト代含む・修了すれば国の実技試験が免除される |
| 直接受験する場合(試験手数料のみ) | 22,800円 | ・学科試験:8,800円・実技試験:14,000円 |
教習所を利用すると費用が高いですが、修了すれば国の実技試験が免除されます。
床上操作式クレーン運転技能講習
5トン以上の床上操作式天井クレーンを扱うためには、「床上操作式クレーン運転技能講習」の修了が必要です。この講習は各都道府県の労働局に登録された教習機関で実施され、学科と実技の両方が含まれています。受講期間は一般的に3日程度で、比較的短期間で取得できる点が特徴です。
資格取得後は、荷役作業中の安全確認や基本操作の習得が義務化されている現場でも対応可能となります。現場の安全確保と業務効率化の両立において、欠かせない資格の一つです。
合格率
技能講習の最終日に行われる修了試験の合格率は、一般的に90%以上と言われており、高い水準です。
落とすための試験ではなく、教習内容の理解度を確認するための試験であるため、3日間の講習を真面目に受講していれば、未経験者でも合格は難しくありません。
費用
受講費用は、実施する教習機関や、現在保有している資格(玉掛け技能講習や大型特殊免許など)による科目免除の有無で異なりますが、相場は以下の通りです。
- 免除なし(初心者など):3万円〜4万円程度
- 免除あり(玉掛け等所持):3万円〜3万7千円程度
費用は比較的安価で、教育訓練給付制度の対象となる講座もあるため、事前に確認することをおすすめします。
無線操作式クレーンでの免許要件
近年では、無線操作による天井クレーンの導入が進んでおり、作業者が荷物の近くから操作できることで安全性や作業効率が向上しています。ただし、5トン以上のクレーンを無線で操作する場合にも、原則として「クレーン・デリック運転士免許」が必要となります。
床上操作式とは異なり、無線操作は視認性や通信環境に依存するため、高度な判断力と操作スキルが求められます。事前に必要な資格要件や運用ルールを確認し、安全教育を徹底しておくことが重要です。
床上無線運転式クレーンのリスクや資格制度の見直し状況については、厚生労働省が公開している検討会資料に詳しい解説があります。
厚生労働省|床上無線運転式天井クレーンの運転に係る資格の在り方について
合格率
無線操作式クレーン専用の国家試験があるわけではなく、必要になるのはクレーン・デリック運転士免許や床上操作式クレーン運転技能講習など、クレーン種別ごとの既存資格です。
クレーン・デリック運転士免許の合格率は、近年の統計で学科が約6割前後、実技が約5割弱とされており、無線操作式クレーンを扱う場合もこの水準が一つの目安になります。
費用
無線操作式クレーンを運転するための資格取得費用は、クレーン・デリック運転士免許や床上操作式クレーン運転技能講習の受講費用がベースになります。
クレーン・デリック運転士免許は、学科・実技試験の手数料に加えて講習費まで含めるとおおよそ12万〜15万円前後、床上操作式クレーン運転技能講習は3万〜4万円前後が目安とされています。これに加えて5トン以上のクレーンを無線化したいと考える場合、機材の導入費用だけでなく、オペレーター育成にかかるこれら教育コストの違いも予算に組み込むことも重要です。
玉掛け技能講習
5トン以上のクレーンを運転する場合、荷物をフックに掛けたり外したりする玉掛け作業を行うには、別途「玉掛け技能講習」の修了が必須です。
クレーン・デリック運転士免許を持っていても、玉掛けの資格がなければ玉掛け作業はできません。特に運転者が一人で玉掛けから運搬まで行う場合(ワンマンオペレーション)は、クレーン免許とセットで必ず取得しておくべき資格です。
合格率
玉掛け技能講習の合格率は、一般的に95%以上と言われています。 学科・実技ともに講習内容をしっかり聞いていれば合格できるレベルです。ただし、合図のミスや安全確認不足は重大事故につながるため、実技試験では厳しくチェックされます。「簡単だから」と油断せず、基本動作を確実にマスターすることが重要です。
費用
受講費用は、保有している資格(クレーン免許や大型特殊免許など)による免除科目の有無で異なりますが、概ね以下の相場です。
- 免除なし(19時間コース):2万5,000円〜3万円程度
- 免除あり(15時間コース等):2万円〜2万5,000円程度
比較的安価かつ短期間(3日程度)で取得できるため、クレーンの資格取得と合わせて計画的に受講することをおすすめします。
5トン以上の天井クレーンを導入する際の注意点

続いて、5トン以上の天井クレーンを導入する際に、注意すべきポイントを本項で解説していきます。
建屋の構造や寸法のチェック
5トン以上の天井クレーンを導入する際は、建屋の構造との適合性の十分な確認が必要です。クレーンの設置には、梁の強度やスパン(柱間の距離)、天井高などが関係します。これらが適合していないと、レールの取り付けが困難になる、安全性に問題が生じるといった恐れがあります。
また、新築ではなく既存の建屋に導入する場合、補強工事が必要になるケースもあります。導入前には、専門業者による現地調査を実施し、構造条件を詳細にチェックすることが推奨されます。
必要な資格・講習の確認
5トンを超える天井クレーンの運転には、必ず対応した資格の取得が求められます。運転者に適切な資格がないまま使用した場合、労働安全衛生法違反となり、罰則の対象になることもあるため注意が必要です。
さらに、クレーンの操作方式(床上操作、無線操作など)によっても必要な資格が異なります。現場の運用形態や担当者のスキルに応じて、必要な講習や免許を事前に確認し、教育体制を整えることが、スムーズな導入と安全な運用につながります。
メンテナンス・定期点検の体制整備
5トン以上の天井クレーンは、高荷重に対応する分、機械的な負荷も大きく、定期的な点検・整備が不可欠です。労働安全衛生法では、年1回の定期自主検査が義務付けられており、ブレーキ・ワイヤー・フックなどの劣化や異常を点検する必要があります。
また、突発的な故障に備えて、保守契約を締結しておくと安心です。導入時には、点検スケジュールや部品交換のサイクルを明確にし、継続的な安全確保を図る体制を構築しておくことが求められます。
まとめ
5トン以上の天井クレーンは、重量物の搬送・保管・荷役作業を安全かつ効率的に行える頼もしい設備です。省人化や空間活用の面でも大きな効果が期待できる一方、建屋構造との適合性や資格の取得、メンテナンス体制の整備など、導入に際しては慎重な検討が必要です。導入前に本記事で紹介したポイントを押さえ、現場に最適なクレーンを選定することが、安全で生産性の高い運用への第一歩となります。
「効率よく運搬作業を進めたい」という場合、ウチダフレイトへ相談してみてはいかがでしょう。80年余りの経験と実績に基づくトータルサポートをしており、貴社の状況をふまえて最適なご提案をいたします。物流事業の立ち上げや小さなお困りごとなど、様々なご相談も受け付けていますので、以下のページから気軽にお問い合わせください。